プラスチックという疫病

 

by ニコル・チャターソン
『Surf 2009』カタログ掲載

 

陸上で営まれる私たちの活動は、地球上でもっとも人間社会から離れた場所にさえ影響を及ぼします。海も例外ではありません。

 

ハワイ諸島から北東へおよそ1,000海里に位置する海流の旋廻渦「北太平洋旋廻」では、私たち人間が及ぼしている影響の大きさをはっきりと目にすることができます。

 

ここにはゴミ、とりわけプラスチック廃棄物が集積し、海は「合成物質のスープ」と化しています。極めて小さなプラスチックの破片から原形を留めたままの自動車のタイヤまで、あらゆる廃棄物が海を汚しているのです。

 

いまから10年前、〈アルガリタ海洋研究財団〉がはじめてこの還流域を訪れた当時は、発見されたプラスチックと食物連鎖の底辺をなす動物プランクトンの比率は6対1でした。しかし2008年に同域で実施した調査では、その比率は8対1にまで増加していました。

 

道路脇の側溝や雨水排水管の悲しむべき状態は多くの人が目にしていると思います。陸で発生したこのようなゴミの残骸は、河川や排水溝を通って最終的に海へと流れ込みます。北太平洋旋廻で見られるゴミも、その80パーセントは陸で発生したものです。

 

こうした廃棄物の一部はいずれ分解するものもあります。しかしながら、プラスチック破片については事情が異なります。

 

本来プラスチックは腐食しない素材であり、生分解してもともと自然界に存在していた物質に戻ることはありません。ほとんどの微生物はプラスチックの化学構造を分解できませんが、その代わりもろくなるにしたがって、より一層小さな破片になっていきます。

 

北太平洋旋廻で採取されるサンプル水には、0.5ミリ以下という針の先よりも小さなプラスチック片がつねに検出されています。

これほど小さくなってしまったプラスチック片を海から除去するのはほぼ不可能ですが、その一方でこうした小さなプラスチック片は海洋生物が簡単に摂取してしまいます。

 

そうした海洋生物には海の食物連鎖の基礎をなしている多くの有機体も含まれています。2008年2月にアルガリタ財団が北太平洋旋廻で採集した、中深層性の小型魚類数種の体内でもプラスチック片は確認されています。これらの小型魚類は海洋食物連鎖の底辺近くに位置していますが、そうした小型魚類は食物連鎖のより上位にいる動物に摂取されるため、その汚染物質は捕食者である上位の動物たちの生体組織へと解き放たれることになります。したがって食物連鎖上位(人間が最上位)の捕食動物には、最も高いレベルの汚染物質が確認されるのです。

 

海鳥のなかにはさらに大きなプラスチック片を摂取している鳥たちも見つかっています。たとえばプラスチック汚染が動物に及ぼす影響を調査するうえで重要な例となっているコアホウドリは、成鳥がペットボトルのふたや使い捨てライターといったプラスチックゴミを飲み込んでしまうだけでなく、ヒナに餌をやる際に、親鳥は自分が飲み込んだそのプラスチックゴミも与えてしまいます。そして消化しないプラスチックで消化器官が満たされた小鳥は、やがて餓死してしまうのです。

 

プラスチックは海洋中の汚染物質を吸着/濃縮することも複数の調査で明らかになっており、ある調査は海に浮遊するプラスチックには周辺の海水に比べて最大100万倍もの汚染物質が含まれていることを指摘しました。そのうえプラスチック添加物のなかには、その媒体が水であろうと生体組織であろうと、周囲に浸出するものもあります。

 

たとえばフタル酸類やビスフェノールAといった化合物は人間の健康に悪影響を及ぼすことが明らかになっており、これらの内分泌撹乱物質、いわゆる環境ホルモンは、癌や脳障害、生殖障害など、人体にさまざまな問題を引き起こすのではないかと推測されています。

 

ではこの状況を止めるにはどうしたら良いのでしょうか。まずは、汚染の源を根絶しなければなりません。人間が作り出す合成高分子は半永久的なものにもかかわらず、それらはしばしば使い捨ての製品に利用されます。不当に高い価格設定がされたペットボトル入りの水を買うのを止めましょう。

 

グラスやステンレススチール製などの再利用できる水筒やボトルは、環境にも健康にも、そして財布にもやさしい選択です。次回買い物に出かけるときはマイバッグを持参し、今度ビーチに行ったらゴミを拾いましょう。

 

こうしたシンプルな方法や小さなライフスタイルの変化から生まれる具体的な行動が地域社会や国中に広がれば、それは違いを生み出す大きな影響力となるはずです。

著者

ニコル・チャターソン
2年以上にわたりアルガリタ財団のオペレーションチームの一員として活動。環境科学政策を専攻する学生で、2009年春卒業予定。

アルガリタ財団は調査、教育、復元を通して海洋環境とその流域の保護に取り組む団体。